冬のお寺巡り 僧侶の案内でめぐる『世界遺産仁和寺』国宝金堂特別参拝

京都

2024.3.22

冬のお寺巡り 僧侶の案内でめぐる
『世界遺産仁和寺』
国宝金堂特別参拝

MADE BY JCB 開催レポート

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【この企画は】

国宝・金堂をはじめ、世界遺産に登録されている
888年創建、格式ある「旧御室御所」総本山仁和寺の魅力を
僧侶のご案内とともに体験していただきました。

国宝や重要文化財を堪能する、
特別な時間

「徒然草」にも登場する、京都でも観光スポットとして高い人気を誇る仁和寺。飛び地も含めると約24万坪の面積からなる仁和寺は、世界遺産に登録されており、境内の数多くの建物、彫刻、絵画、書跡、工芸などが国宝や重要文化財に指定されている。今回は、その仁和寺で特別公開された国宝・金堂を中心に、僧侶の案内のもとで拝観する貴重な体験が実施された。

今回、案内をしてくださった佐々木栞祐(かんゆう)僧侶によると、仁和寺は平安時代後期の886年(仁和2年)に光孝天皇の発願で建造を開始。その意志を引き継いだ宇多天皇によって888年(仁和4年)に落慶し、のちに宇多天皇は譲位、落飾して初の法皇に。以降、1867年(慶応3年)まで皇室出身者が住職(門跡)を務めた真言宗御室派の総本山である。非常に格式高い寺院だ。

今回、特別に公開されたのが国宝である金堂。この金堂は、御所の紫宸殿を1642〜44年(寛永19~21年)に移築した建物で、現存する紫宸殿跡で最古のものだ。

金堂に入る前には、特別なルームスリッパが参加者に配られた。特別な法要を行うとき、僧侶はいつもと違う法衣を身につけるが、そうした際に履くのが草鞋(そうかい)と呼ばれる履物。このスリッパは、その草鞋をモチーフにしてつくられたもの。草鞋は木でできているため、実際には硬くて歩きづらいとのことだが、このルームスリッパは履きやすく、板の間で寒い本堂でも快適にお参りすることができる。また、後世に継承しなくてはならない大切な文化財を傷つけることがないようにと配慮が施されたものでもある。同様に配られた仁和寺オリジナルの繰り返し使える布製靴袋とともに、旅の思い出のプレゼントとなった。

さて、いよいよ金堂のなかへ。金堂の中心、本尊を安置する須弥壇には阿弥陀如来、拝観者から見て向かって左に観音菩薩、右に勢至菩薩の阿弥陀三尊像が。そのまわりに四天王の像が並ぶ。阿弥陀三尊像の表情はじつに穏やかで、息を呑む圧巻の存在感でありながら、静謐な空気をまとっている。
また、背後の壁画は、江戸時代前期の徳川家光公の時代に描かれた極楽浄土の世界。
その厳かな趣も、清雅な色調も、当時のままである。
(※特別に許可を得て撮影を行いました)

そして、今回が2度目の公開となった、金堂の裏堂に描かれた五大明王の壁画。2018年に初公開されるまで、なんと372年間ものあいだ非公開だったというから、いかに貴重な機会であるかがわかる。こちらの五大明王壁画も江戸時代前期、寛永年間に描かれたものだが、光が入らない場所であるため、いまも鮮やかな色彩を放っている。
描かれている五大明王は、金剛薬叉明王、降三世明王、不動明王、軍荼利明王、大威徳明王だ。

金剛薬叉明王(こんごうやくしゃ みょうおう)
馬がいななく様なたてがみと牙が印象的です。経典にはこの牙で一切の苦しみや悪、煩悩を噛み砕き、呑み込んでしまうと記されています。この明王は、威力ある神という意味で鬼神の名である薬叉と名付けられました。また一切の苦しみを呑み込んでしまうことから、この明王も怨敵を打ち破る調伏の祈祷で修されますが、敬愛でも修されることもあります。また不食または拒食の人に霊験あらたかといわれ、この尊の加持した食物を与えればたちまちに完食するといわれています。
●密号(密教における称号):調伏金剛。不空成就如来の変化身(仏が人々を救うために姿を変えてあらわした身)です。

降三世明王(ごうざんぜ みょうおう)
大日如来が須弥山頂で『金剛頂経』を説こうとした時、大自在天たちが仏勅に従わなかった為、大日如来がこの降三世明王に変化し、大自在天達を屈服させたと説かれています。左足で踏まれているのは、この時に恭順した大自在天、右足は妻の烏摩妃です。
降三世の三世とは、過去・現在・未来の三世を示し、この三世の煩悩を降すと言われ、息災を目的に修法されることもありますが、この尊が出現した上記の因縁に基づき、もっぱら調伏を目的とする修法の際に拝まれています。
●密号:最勝金剛。阿閦如来の変化身です。

不動明王(ふどう みょうおう)
密教特有の尊格である明王の一尊で、五大明王の中心となる明王です。「お不動さん」の名で親しまれ、大日大聖不動明王、無動明王、無動尊、不動尊などとも呼ばれています。
また、真言宗をはじめ、天台宗、禅宗、日蓮宗等の日本仏教の諸派および修験道で幅広く信仰されています。
●密号:常住金剛。大日如来の変化身です。

軍荼利明王(ぐんだり みょうおう)
手に軍持を持っていますが、軍持とは水瓶のことで、甘露の智水を入れる器を意味します。この尊は各経典に「能(よ)く毘那夜迦(びなやか)等の障碍を除く」と説かれています。毘那夜迦とは悟りを妨げる魔のことを指しており、その為、密教の修法における結界は全てこの軍荼利明王が司ります。
また降三世明王と同じく主として調伏、あるいは息災を目的に修法されています。
●密号:甘露金剛。宝生如来の変化身です。

大威徳明王(だいいとく みょうおう)
この尊は六面六臂六足(六つの顔、腕、足)に描かれることが多い為、別名で六足尊とも呼ばれています。善人に悪意を抱く者や危害を加えようとする者を懲らしめ、悪人の呪詛を破り、悪夢を消滅し、悪病を除くことに霊験あらたかです。
この尊の特別な修法としては前述のような悪夢を消滅させるものや、夫婦離別や相思相愛の者を別れさせるために祈祷される場合もあり、主として調伏の修法に用いられます。
●密号:持明金剛。阿弥陀如来の変化身ですが、文殊菩薩の忿怒形ともいわれています。

僧侶による、ひとつひとつの絵に込められた意味や背景などの丁寧な解説。わたしたち人間も、五大明王と同じように見た目や役割は一人ひとり異なっている。時代を超えた鮮明かつ力強い絵と向かい合うことで、自分自身をあらためて見つめ直す、得がたい時間となった。

国指定名勝・御所庭園など、
見どころが盛りだくさん

さらに、仁和寺の見どころのひとつが、国指定名勝である仁和寺御所庭園。白書院は修理工事中だったが、歴史を感じさせる木製の回廊を進むと見える北庭の眺めは、優雅そのもの。

仁和寺御所庭園にある御殿の建物のひとつである宸殿。上段の間、中段の間、下段の間の三室からなり、御所の御用絵師・原在泉が夏の葵祭や秋の観月の宴などを描いた襖も美しい。

また、宸殿中段の間は2019年より将棋の「竜王戦」の対局の会場にもなっており、対局を行った棋士がそれぞれ揮毫した扇子や封じ手などを展示。滅多に見ることができない品々だ。

仁和寺は、ほかにも見どころがたくさん。総高36.18mもの五重塔や、檜の樹皮を用いた屋根葺きの趣ある外観の御影堂など、重要文化財が点在する。

風情ある建造物の数々と、僧侶の細やかで時にユーモアを交えたわかりやすい案内によって、あっという間に時間は過ぎた。仁和寺の名物でもある御室桜はまだ蕾ながら暖かな日差しにも恵まれた、この日。知的好奇心が刺激されると同時に、すばらしい自然の豊かさに身体が浄化されていく、充実したひとときとなった。

このイベントについて
  • 日程・会場
開催日2024年2月17日(土)・2月23日(金・祝)
会場名仁和寺(京都)
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