
Vol.13 森高千里
JCB Presents Chisato Moritaka Special Live Vol.3 in BLUE NOTE TOKYO
【JCB MUSICとは】
JCBが独自に企画している、JCBカード会員の方だけにお贈りする限定ライブ。
今回のゲストは、2015年1月、6月に続き、1年ぶり3回目の登場となる森高千里。
当日のReport と Set Listをお届けします。
自然体にして圧倒的な存在感。
森高千里@Blue Note TOKYO
Special Liveをレポート!
2016年7月23、24日。東京・南青山に位置するジャズの聖地、ブルーノート東京。その舞台に、森高千里が三たび降り立った。2015年1月、6月に続いて、丸1年ぶりの開催となった「JCB Presents Chisato Moritaka Special Live vol.3 in Blue Note TOKYO」。2日間で4ステージが行われたなかから24日の2回目、ファイナルステージの模様をリポートする。いきなり結論を先取りしてしまうと「いまの森高、最高」。そのことを十全に感じさせるライブだった。
開場は、開演に先立つこと1時間前の7:00PM。ブルーノート東京に集う人々の装いは、やはり普段のライブ会場よりもフォーマルかつドレッシーな印象だ。また、vol.2の前回は梅雨の只中だったが、今回のvol.3は間もなく梅雨明けするのではという7月末の開催。(実際、1週間後に関東甲信越は梅雨明けした。)そのせいか浴衣で来ている若い女性の姿も見受けられて、夏の気配が漂っていた。おのおのが食事やお酒を楽しみつつ、気持ちをやわらげている。なおかつ、ライブに向けて徐々に高揚していっているのも感じられて、その独特な雰囲気がたまらない。
8:00PM。バンドマスターの高橋愉一を筆頭に、森高サウンドを支えるバンド「ザ・ニューバンガーズ」の面々が入場。そうしてゆっくりと流れてきたメロディは…「私の夏」! すると客席後方から、森高千里が登場。千里コールとひときわ大きな拍手に包まれてステージへ。vol.1のシルバー、vol.2のブラックに続くvol.3の衣装は、きらめくホワイト+ブルー! 髪の毛にも青色を差していて彼女自身、夏らしさが満開だ。
♪どこかへ行きたいな今年も この間彼とは別れたけど
「私の夏」の発表は1993年、当時は全日空沖縄のキャンペーンソングだった。思い立って女友達と二人で沖縄へ行く、という“女性のしたたかな明るさ"を歌ったこの曲が、当時どれだけ女の子をエンパワーしたか。(というのも、女性の2人旅がけっこう珍しかった印象がある。)当時もいまも、森高は自然体にして圧倒的な存在感だよな…てなことを振り返っていると、続いては一転、ノスタルジックな海沿いの街を描写した「夏の日」。2曲を歌い終え、挨拶と自己紹介をしたのち「7月のライブは久しぶり。『夏の日』自体、久しぶりに歌えたのでよかったです」。感慨深げに語り、顔をほころばせた。
また、彼女は今年4月に起きた「熊本地震」に言及。会場に募金箱を設置したことをアナウンスする。「6月にも熊本に帰ってきたんですが、まだまだ避難所で生活している方が多い。でもみなさん前向きだし、私が帰ってきたことを本当に喜んでくれて、逆に私の方が元気をもらったくらいです」。故郷を気遣う思いをまっすぐに語った。
そして今回も登場した、オリジナルカクテルの紹介。彼女が好きというチチをベースにしたカクテルの名は、その名もズバリ「夏の日」(ノンアルコールカクテルは「静かな夏」。森高をはじめ、お客さんもそれぞれにグラスを手に取って、乾杯。そこから「PIANO」へという流れも秀逸だった。ミディアムテンポのナンバーが、ブルーノート東京をリゾートのような趣に彩る。さらに続けて「Sweet Candy」。
♪南風が夏の 街を通り抜けてく 今年の夏も あぁ 何もしなかったわ
作詞はもちろん森高千里、作曲をバンドマスターの高橋愉一が手がけた1997年のナンバー。森高は自身の歌を、かつてはきちんと歌い切れていなかったと感じていたという。しかし、年月を重ねたことによって、より表現できるようになってきた。「だからこそ、いま歌うことが本当に楽しい」――彼女はたびたび、そう述べている。聴く方も言葉に内包される感情が何倍にもなっていると感じる。夏の寂しさ、楽しさ、やるせなさ、うれしさ…なんだか夏にまつわる、すべての感情の起伏が再現される感覚に陥る。あぁお酒が、おいしいこと。
MCでバンドメンバーを紹介したのち、森高はいよいよ背後に備えられたドラムセットへ! それまではドラムの音のみ、森高の演奏を録音したものを流していたのだが、ついに生音で聴ける。本人は「初めて来てくれた方は、私が叩きながら歌うことに驚くかもしれないですけど…」って言っていたけど、それはそうだろう。当時ですら、彼女のドラムは衝撃を持って迎えられたのだから。またなにより、奏でるリズムが正確無比であることが森高千里を“アイドル"としてしか見ていなかった音楽ファンの度胆を抜いたのだった。そのドラムが、生で再び…!
披露したのは、19年前にドラムのレコーディングのために訪れたリバプールの街からインスパイアされて作った「Tony Slavin」、さらにビートルズのカバー「Helle Goodbye」、そして「渡良瀬橋」。
自らビートを紡ぎながら笑顔で歌う森高――。個人的に久々にそれを見たのもあって、感じ入りながら見入り、かつ聴き入ってしまった。歌い終えて「簡単そうかもしれないけど、バラードを叩くときの方がテンポを保つのが難しいんですよ」と主に若いお客さんに向けて解説。終演後には「自分の曲じゃないこともあって、ビートルズが一番緊張しましたね」と笑っていたが、なんのなんの。掛け値なしにカッコよかった。
今回のブルーノート東京でのライブで、あらためて驚いたのが、いま現在の森高千里の“声の伸び"だ。実はライブの1日目の公演を終えた深夜に、彼女は地上波の生放送に出演している。そしてそこでも歌を披露したのだが、その翌日にまた2回の公演である。しかし、まったく擦れることもなければ、声量の衰えもない。むしろ艶やかさを増して聴こえてきたことに、ゾクゾクしてしまった。そしてそのことを一番象徴していたのが、こちらも「最初は歌えなくてたいへんだったんですけど、歌うごとにどんどん好きになる」と語ってから披露したバラード「雨」と、続けてのアップテンポな「ユートピア」。というのも、対極的な2曲ではあるけれど、どちらも息継ぎと声の響かせ方の加減が、とても難しい曲だと思う。それをまた終盤で披露するあたりに、いまの森高のシンガーとしての力量を垣間見る思いがした。
本編最後は、こちらもライブでは久しぶり「A君の悲劇」で、独特のリリックを炸裂。気になっていた男の子に4年ぶりに会ったものの、彼が自分をずっと好きでいたことを逆に「気持ち悪い」と突き放す歌詞が、なんともおそろしく、かつ面白い。そして、いまや森高ライブにおける新たな定番、外せないナンバーとなった「Don't Stop The Music」。tofubeatsが「feat 森高千里」で2013年に発表、森高自身とても刺激を受けたと語る曲だが…あれ、ちょっと音が変わった? 聴いていてそんな思いを抱いた。以前よりいっそう、一音一音の粒が立ってるように感じられたのだけど、そのことを終演後にバックステージにいたプロデューサーに訊いてみた。すると「アレンジは変えたわけではない」との返答が。ただ「生バンドによる音と、緻密に作られた曲のかみ合い方がさらにうまくいくようになっている」ということで、森高のライブはサウンド面でも進化し続けていることが判明。
「デビュー何周年くらいなのかはまったく意識しないのでわからないんですけど(笑)、
いま歌えていることが本当に奇跡だなって感じています」
アンコールで登場した森高は、そう現在の自分を表現した。そこからの「この街」、そして最後の最後、このファイナルステージだけのボーナス「手をたたこう」! みんなを温かな空気に包み込んでみせ、見事に大団円を迎えたのだった。ブルーノート東京というぜいたくな場で、またお客さんと近い距離で、いまの森高千里を表現しきった2時間強。
「ありがとう、幸せになれました!!」
って、いやいやいや! それはこっちのセリフですよ。
Set List
M1 | 私の夏 |
M2 | 夏の日 |
M3 | PIANO |
M4 | Sweet Candy |
M5 | Tony Slavin |
M6 | Hello Goodbye |
M7 | 渡良瀬橋 |
M8 | 雨 |
M9 | ユートピア |
M10 | A君の悲劇 |
M11 | Don’t Stop The Music |
En1 | この街 |
En2 | 手をたたこう |
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稲垣潤一 May J.
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