
Vol.7 森高千里
JCB Presents Chisato Moritaka Special Live in BLUE NOTE TOKYO
【JCB MUSICとは】
JCBが独自に企画している、JCBカード会員の方だけにお贈りする限定ライブ。
今回は、森高千里が初登場!当日のReport と Set Listをお届けします。
等身大の“オトナの恋歌”に酔いしれる。
森高千里@Blue Note TOKYO
SPECIAL LIVEをレポート!
2015年1月23、24日、東京・南青山のブルーノート東京で開催された森高千里の“JCB Presents Chisato Moritaka Special Live In Blue Note TOKYO”。いつもとはちょっと違った雰囲気の中での2日間4公演、ここでしか体験できないスペシャルなライヴが繰り広げられた。その中から24日のファースト・ステージの模様を振り返ってみよう。
連日満員という客席。華やかにドレスアップしたお客様の姿も目立つ。ステージ最前列には、ご夫婦で参加という和服姿の素敵な女性も。間もなく、いつになく至近距離で森高のライヴ・パフォーマンスを見られるのだ。彼女のことだからブルーノート東京ならではの選曲やアレンジが飛び出すに違いない。と、期待に胸を高鳴らせ、シックなインテリアに囲まれた空間でお酒や料理、おしゃべりを楽しみながら開演を待つ。なんともオトナで素敵なひとときだ。
そしていよいよ、お待ちかねのショータイム!まず、クールなサングラスで決めたバンマス・高橋諭一率いる“THE BLUE NOTES”(実はおなじみ森高バンドの面々ですが、ツアーごとにバンド名が変わるのです)が登場。彼らに続くようにして森高千里が、大歓声と拍手渦巻く客席を通ってステージに立つ。近未来と60'sがミックスされたようなスペース・テイストのミニドレス姿。ヘッドドレスから足下まで、すべてがキラキラとシルバーで統一されているファッションが何ともゴージャスでキュートだ。
オープニングを飾ったのは「林檎酒のルール」。1987年のファースト・アルバム『NEW SEASON』収録のナンバーだ。ライヴで歌うのはデビュー当時以来とのこと。懐かしい。けれど、当夜のライヴの雰囲気にぴったりな曲にも思える。あの頃は、背伸びしてオトナを気取る少女のあどけなさがグッとくる曲だったのに、今の森高が歌えば等身大の“オトナの恋歌”に聞こえてくるから不思議だ。続く「星に願いを」も、洒落たコード感をともなったメロウなAORサウンドがジャズ・クラブでのライヴにぴったり。低めの音域で揺らめく歌声が心地よい。歌の中で無邪気に星空を見上げる主人公も、デビュー当時よりちょっぴりオトナになった感じがする。
「“ブルーノート”といえばジャズ、ジャズと言えば……森高!え、なんでここで笑うんですか(笑)」
お茶目なMCに続いて歌われたのは、おなじみ森高流ジャズ・ソングの傑作「GIN GIN GIN」と、とびきりジャジーでカッコいいサウンドに乗せてゴキブリと対決する恐怖を歌ったユニークな「ザ・バスターズ・ブルース」。「バスターズ・ブルース」にまつわるMCでは、「みなさんは素手?スリッパ?」とゴキブリ退治にまつわる話題まで飛び出して場内は大ウケだった。
ロマンティックな「SNOW AGAIN」ではぐっと存在感を増した歌唱力で圧倒する。素晴らしかった。この曲ばかりじゃない。どの曲でも、最近、より深みを増した彼女の表現力を堪能できた。YouTubeのセルフカヴァー企画を通して、あらためて自分の作品たちと真剣に向きあった成果がこんなところにも現れているのかもしれない。かと思えば、やっぱり彼女の中には永遠の“GIRL”がいるなぁとしみじみ感じる場面もあって。たとえば「片思い」。これまたレアなナンバーだが、やっぱり森高のキュートな青春ラヴ・ソングには今でも胸キュン。こんな可愛らしい歌を聴かせる森高千里、今でもあり?はい、ありでした。
メンバー紹介をまじえてのMCコーナーでは、お客さんとも楽しいやりとりも。「緊張しますか?」と話しかけたり、ちびっ子を見つけるとお母さんのように優しく「楽しい?ジュース飲んでるの?」と声をかけたり。そんな彼女の自然体に、会場全体がいい雰囲気に和んでゆく。昨年はワンマン・ツアーの他に、夏フェスにも参戦したり、年末にはtofubeatsとの共演で初のクラブ・イベントを大成功させたり。デビュー25周年を機にライブ活動を本格的に再開して以来、昨年はもっとも充実した日々だったようだ。
「自分で言うのも何ですけど……進化し続けてるじゃん、森高!みたいな」
ちょっと照れながらもきっぱりと放たれた彼女の言葉。確かな手応えとともに得ることができた、まさに本音なのだろう。
スガシカオ作曲、森高作詞の名曲「まひるの星」をドラマチックに歌い上げて後半戦がスタート。クールなダンス・ビートに女の子の本音を乗せた“森高スタイル”の原型ともいえる初の自作詞曲「ミーハー」から、“tofubeats featuring 森高千里”名義で2013年にリリースされた「Don't Stop The Music」へ……と連なるダンサブルなパートでは、自らの原点である初期楽曲と、新世代のクリエイターとの最新コラボ曲が一気に直結する醍醐味も味わえた。これぞ、進化し続ける森高の真骨頂だ。
でも、変わり続けるだけではない。変わらないこと。それも同じくらい大切な彼女の魅力だ。「渡良瀬橋」「雨(ロックversion)」「ALONE」……時を超えて愛され続け、今ではスタンダード・ナンバーへと成長した名曲を彼女がていねいに歌いあげると、その曲を初めて聴いた時の気持ちが甦ってくる。森高と同じ時代を生きてきたファンは、これらの曲が多くの人たちに愛されてスタンダードへと育っていく過程をリアルタイムで見てきたのだ。そんな名曲たちと過ごしてきた日々を、それぞれ心に思い浮かべていたのではないだろうか。
「雨」は初めてのバラード・シングルで、この曲を出すことが“森高らしくない”のではというスタッフの意見もあったのだとか。けれど、この曲をきっかけにファンになったという女性も多かったようだ。この曲を紹介するMCで、彼女は改めて「出してよかったです」と語った。そのおかげだろうか、当夜の客席にも女性ファンの姿はとても多かった。デビュー当時の森高には圧倒的に男性ファンが多かったのだが。そんな昔話をしても、もはや誰にも信じてもらえないかもしれない。
本編ラストのナンバー「ララ サンシャイン」を聴きながら、この曲が毎朝テレビで流れていたころ、森高千里は明るくて元気で、いやなことはスパッと忘れてどんどん前に進んでゆくアネゴ的な存在……そんなイメージで語られることも多かったなぁ、と思い出した。でも、同時に、くじけそうな自分自身に「明けない夜はない」と言い聞かせているような曲でもあったのだろう。アンコールに応えて歌われた「私のように」を聴きながら、ふとそんなことを思った。歌い始める前、これは悩み多き時代に書いた詩なのだと彼女は話してくれた。「でも、今になってみれば、あの時だから書けた曲」だ、と。彼女にしかわからない、悩みや、辛い思い出もたくさん詰まった曲。でも、そんな日々を綴った歌詞すら、すべて優しく慈しむように歌う彼女の声は本当に美しかった。“今が最高”と言い切ることができる、進化している彼女だからこその歌声だと思った。
進化してるじゃん、森高!
2015年1月 能地祐子(Yuko Nohji)
PHOTO BY 三浦憲治
Set List
M1 | 林檎酒のルール |
M2 | 星に願いを |
M3 | GIN GIN GIN |
M4 | ザ・バスターズ・ブルース |
M5 | SNOW AGAIN |
M6 | 片思い |
M7 | まひるの星 |
M8 | ミーハー |
M9 | Don't Stop The Music |
M10 | 渡良瀬橋 |
M11 | 雨(ロックversion) |
M12 | ALONE |
M13 | ララ サンシャイン |
En | 私のように |
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